あの人が好きなもの

あの人が好きなもの

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前回のお話

~砂漠市場~

(ここなら何かあるだろうと思って来てみたものの……。

種類が多すぎて逆に選びきれないな。

目星を付けないまま無計画で来たのはまずかったか)

さぁさぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。

日用品から贈答品まで何でも揃うシャーロック商会をどうぞご利用ください~。

む、あれは……。

いらっしゃいませ~。何をお探しで?

すまない、あの棚の上にある花は売り物か?

お客さんお目が高い! でもあの三色のバラだけは非売品でね。

そうか、ならどこに行けば手に入る?

最近はめっきり咲く場所が減ったから、わかりかねますね~。

あれも随分前に特殊な処理をして枯れないようにしてあるくらいですから。

三色のバラが気になるということは、なにかプレゼントをお探しで?

そうだ。しかしイマイチ相手の好みもわからぬので困っている。

年頃の女性へのプレゼントなら私の娘に聞けばいいと思うが

あいにく今日は友達と出掛けているな……。

仕方がない。

変なものを買って機嫌を損ねてしまっても困るし、今回はやはり諦めるか。

お義父さん、珍しいものが手に入ったんだけどーーってごめんなさい、お客さん?

いや、気にしなくていい。もう帰るところだ。

女性へのプレゼントを探しているのだが、相手の好みがわからんものでな。

リサがいればいいアドバイスが出来たかもしれないが。

そうなんだ。それは残念だね。

ところで、お義父さん。これって売り物になるかな?

私に売れないものはない。

お前には商才がないから代わりに私が売ってやろう。

どれどれ、今度は一体なにを拾ってきたんだ?

これなんだけど。

こ、これは――カタ獣の涙花(るいか)じゃないか!

こんな綺麗な状態で残っているなんて、お前一体これをどこで……!

さっき軍の人たちがやっつけたカタ獣の後処理を頼まれたんだ。

肉や革はいつものルートで捌けるけど、これはどうしたらいいのかわからなくて。

いつもはぐちゃぐちゃになっちゃうから捨てちゃうんだけど

今回は珍しく綺麗に残っていたからそのまま持ってきたんだ。

って、そういえばお客さんも軍人さん?

あぁ、おそらく先程その獣を始末したのは私たちの隊だろう。

じゃあこれはあなたにあげますよ。元々はあなたのものです。

お花だし、プレゼントになるんじゃないですか?

きっとお花を貰って嫌がる女性はいませんよ。

それもそうだな。では――。

ちょ、ちょっと待て!

お前たち、それが何なのかわかっているのか!?

何って、綺麗な花ですよね?

にしか見えないが、何か特殊なものなのか?

特殊も何も、それには大幅にマナを強化する効果があってだな。

その効果は絶大なためルーン魔法の強化はもちろん、副次的な効果として他にも――。

なら丁度いい。相手はルーン使いなのだ。

ありがたくもらっていくぞ。

あ、お客さん! 話には続きがあってそれには――!

っと、まぁいいか。

どういった関係の相手へやるのか知らんが、どうなろうとも私には関係ない。

相手もルーン使いなら一般的な効用くらいは知っているだろう。

それよりも問題なのは……。

ちょうど良かったですね、お義父さん。

良くない!

ネッド! お前、商才がないにも程があるぞ!

一体あの花1つでいくら儲けが出たと思っているんだ!

それを全部タダにしやがって!

まぁまぁいいじゃないですか。

きっとまたいつか違う形で、その分の利益が返ってきますよ。

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