もう一人の兄弟

もう一人の兄弟

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~砂漠王国 国境周辺の戦場~

太陽王国の兵よ、怯むな! ウィリアム王を守るのだ!

俺に続け!

うぉおおおおおお!

 

~太陽王国 軍舎~

セオドア、今日も私の代わりに指揮をとってもらってすまないな。

気にしなくていい。これもいつ王が逝こうとも問題なく引き継ぐための訓練だ。

ははは、お前が言うと冗談に聞こえないな。

しかし頼もしいよ、そう言ってもらえると私も安心してアンジェリアを託すことが出来る。

ーー愚か者! 冗談に決まっているだろう!

まだ幼いアンジェリアを一人残して逝く気か!?

私とてそうしたくはない、したくはないが、自分の最後くらいはわかる。

砂漠王国との関係も解決しないままでお前には苦労をかけることになるが、太陽王国とアンジェリアのことは頼んだぞ。

…………。

それに、あの子は一人ではない。お前がいるのだ。

この国の跡継ぎはお前とまだ幼いあの子……達しかいないのだから。

……ふん。

体よく子守を押し付けようとしているな。

そんなことを言っていられるうちは取り合わん。

わっはっは!

わが弟ながら相変わらず手厳しいな。だが、だからこそ安心できる。

~砂漠 戦場跡~
ーー兄者のやつ、先日の戦で傷を負ってからなんて気弱な。
これでは兵士たちの士気にも悪影響が……ん?

…………。

(先の戦で親とはぐれでもしたか?)
おい、お前ーー。

――ッ!?

そうなる気もわかるが、ひとまずその物騒な物をおろせ。
危害を加える気はない。お前が砂漠王国のスパイでもない限りな。

……。

私は太陽王国のセオドアという。
お前の名は?

……カレン。
カレン、アルラ、フェルナンデス。

(エリ……いや、アンジェリアより、年は少し上くらいか)
カレン、親はどうした。

死んだ。私を逃がして。

そうか。孤児を引き取っている施設があるから案内しよう。
手をーー。

…………?

カレン、お前、鱗族か。

……あなたも私の鱗が嫌い?

嫌いではない。

……そう、よかった。
嫌いな人も、いるから。気持ち悪い、触りたくない、って。

…………やめだ。

え?

お前を施設に連れていくのはやめにする。

……わかった。亜人を受け入れたがらない人がいることくらい知っている。
やりたいこともないけど、死ぬのは嫌だからなんとかして生きていくよ。

どこへ行く。
私がお前を、カレン・アルラ・フェルナンデスを個人的に保護する。

……どうして。

鱗族は砂漠王国に潜り込ませるのに都合が良い。
受け入れられやすいだろう。利用価値がありそうだ。

さっき言っていたみたいにスパイになれ、ってこと?

そうだ。それが嫌なら独りで生きていくがいい。

もし、私がすでに砂漠王国のスパイだったとしたら?

…………。

…………。

はーっはっはっはっは!
その時は砂漠王国の勝ちだ。

………。

~太陽王国 軍舎~

いま戻った。
………。

あぁ、遅かった――なッ!?
セオドア、その子はどうした。孤児か?
ならばすぐに施設へ――。

その必要はない。私の子だ。

お前……そうか。わかった。
ディラン!

はっ! お呼びで!

すぐに湯と子供服の準備を!

ウィリアム王……さすがに軍に子供服の用意は……。

はっはっは! それもそうだな!
ならばこれを使え! 私が寂しくて持ち出したアンジェリアの寝巻だ!

王……王女を溺愛するのも程々に。
では用意して参ります。

……すまない。

何を謝ることがある。
弟に娘が、私に姪が、アンジェリアに従姉が出来たのだ。これほど嬉しいことがあるものか。
きっとあの子も姉が出来て喜ぶだろう。

……一生知ることもない方が幸せだろうがな。

そうはならぬようにするのが我々の役目だ。

ならばもっと働いてもらわないとな。
次の指揮は取らんぞ。

お、おいおい……それとこれは話が別だろう。

湯の用意が出来たようだ。行こうか。

………もしかして、おじさんって、ロリコン?

な、なにをっ!?

あはははは、冗談だよ。

一緒に行こう。ありがとね。

まったく……まずは口の利き方からだな。

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